実現しなかった、橿原運動公園と橿原公苑の一体的整備


令和13年に内々定している奈良県での国民スポーツ大会(国体)の開催。
その主会場の候補地となったのが、橿原運動公園です。
奈良県は、橿原運動公園にメイン会場となる陸上競技場などの建設を、市に提案しました。

令和2年12月時点での奈良県からの提案では

・橿原運動公園と橿原公苑の土地・施設を全部交換
 
(橿原運動公園は敷地を拡張、橿原公苑は橿原神宮からの借地を解消の上)

・交換後の橿原運動公園に、県は多機能複合型の施設などを「県のスポーツ拠点」として整備。(具体的には、複合アリーナの新築や、野球場の高規格化など、合わせて約240億円規模の整備が予定されていたことが、令和3年6月議会の特別委員会の中で明らかになっています)

・交換後の橿原公苑は、橿原市が自らの考え方に基づいて整備

とありました。橿原運動公演は30ヘクタール、橿原公苑は10ヘクタールで、広さも違うため、その差額は金銭で補うということでした。 同時に、両施設において防災機能の強化を行うことも、示されていました。

令和2年12月18日付、奈良県と橿原市の協議資料の中にあった、奈良県作成のイメージ図。あくまでイメージで具体的には今後検討となっていました。


令和3年の3月議会では「市スポーツ施設の活用及び整備などに関する特別委員会」が設置されることとなりました。

国体や一体的整備ありきではなく、あくまで橿原市のスポーツ施設全般について審議する場ですが、奈良県との一体的整備案も重要なテーマのひとつでした。

令和3年の3月議会、6月議会で開かれたこの委員会では、主に前述した奈良県からの一体的整備案についてと、橿原市の今後のスポーツ施設の方向性をまとめる「橿原市スポーツ施設計画」の進捗について審議しました。

一体的整備については「今まで170億円かけて整備してきた市民の公園を手放すのはどうなのか」「県の施設になると予約が取りにくいなど、市民が使いにくくなる」「市内のスポーツ関連団体へ説明にいっているのか」といった懸念の声が、一部の市議から挙がりました。

一方で、「橿原市スポーツ施設計画」の中間報告では、橿原運動公園で想定される施設の修繕費用に約42億、10年間のランニングコストに7.5億円、合わせて50億の費用が見込まれることも明らかになりました。

特に、総合プールは老朽化が激しく、利用者も減少していて、季節限定の施設であることからも「廃止が妥当」という考え方が示されていました。(42億の中には、解体費用プールの解体費用4.2億が含まれています。建て替える場合はさらに34億ほどかかります。)

市内には他にも中央体育館などといった老朽化している施設があります。運動公園を今後もいまと同じように維持管理していくことができるのか、不安の残る内容でした。さらに、公園全体の大規模な整備やリニューアルは、市の財政だけでは難しいと考えられます。

橿原運動公園内の劣化したベンチ。公園全体にも、老朽化した部分が見られます。

そして令和3年10月の特別委員会では、8月30日付で奈良県が出した提案書について議論を行いました。

この提案書では、二つの公園を交換した上で、本来は市が行う橿原運動公園の施設の撤去や処分費用を県が全部または一部を負担、橿原公苑で市が不要と考える施設についても撤去費用は県負担など、県がかなりを負担してくれる内容でした。さらに、運動公園の運営については県と市で協議会を設置するとしており、市民の利便性が損なわれない方法について話し合うことになっていました。

私は、市の将来負担が減ると考えましたし、同じ意見の議員も少なくありませんでした。私には市にとって有利な内容になっていると感じられましたが、一部の議員からは「全部交換」ではなく、一部交換や市から県への貸出などの案を検討すべきだという声も出ていました。

そんな中、令和3年11月22日に行われた特別委員会の中で、市から「全部交換」「一部譲渡」「設置許可」という3つの案について検討資料が出されました。その上で、コスト面や土地管理のしやすさなどで考えれば、「全部交換のメリットが一番大きい」という説明がありました。
私の質問に対し、亀田市長は、県と市の一体的整備により「老朽化した施設を整備して、最新の設備を持った施設が市内に増える」「一番コストがかからない」として、「全部交換が一番市に有益な案だ」と答弁されました。

運動公園は、昭和51年から整備が始まり、面積や施設を増やしてきました。
しかし、整備が進んだ当初、橿原市の人口は右肩上がりで、平成元年には、12年後の目標人口を15万人と設定していました。しかし実際にはそこまでいきませんでした。平成22年の12万5000人をピークに年々減少し、現在は12万500人程度(1月号の広報かしはらのデータより)、2040年には10万9000人になると予測されています。
つまり、橿原運動公園を整備しはじめた当初に見込んでいた市の人口規模から、大きく下がっています。

平成元年の「橿原市第一次総合計画」より 人口推計から、平成12年の目標人口は「15万人」とされていました。


こうしたことを踏まえて、私は、市が維持管理できる公園の規模はどれくらいかを検討する機会であると訴えました。その上で、「防災機能だけは減らしてはいけない。一体的整備によって防災機能は増えるのか」と質問。スポーツ推進課長は「増える」と明言しました。

この特別委員会の最後には「全部交換」による一体的整備案に対し、議員23人の意思表示を行うことになりました。すると、12人が反対、11人が賛成という結果になりました。
私は、コスト面と防災面を考えても、市民に一番有益な案と判断し、賛成しました。

この結果を受け、奈良県知事は一体的整備を断念すると、正式に表明しました。
朝日新聞の記事 奈良県、国スポ会場の一体的整備を断念 橿原市以外も検討

そもそも、令和2年12月段階で、県は当初「令和3年7月上旬までに、市として事業推進の意思を決定してください」と橿原市に伝えており、議会でも説明がありました。

しかし、橿原市議会で前向きな議論が進まず、市として早期の決定ができませんでした。その上、前述した市議会の過半数反対によって知事が断念したことから、一体的整備については事実上、実現不可能となりました。

私としては大変残念に思っています。
「橿原市を国体の主会場にして欲しい」という声もまだあります。一方で「国体は必要ない」という意見もあります。しかしながら、国体とは別の話として、運動公園のこれからのあり方は喫緊の課題です。財政が厳しい中で、巨額の維持費をどうしていけばいいのでしょう。

市民の方々からは「公園内の古い施設を新しくしてほしい」「屋内プールが欲しい」「機能が充実した、こどもと1日過ごせる公園が欲しい」といった声もあります。今後これらの声にどう応えていけばよいのか、考えなくてはなりません。

市議会では、公園の交換案に加えて、本庁舎の問題も並行して議論されています。現在の本庁舎は耐震性能が極めて低く、対策を考える必要があります。前市長時代から計画されていた本庁舎の建て替えには、50億円以上の建設費と、あらたに庁舎管理費用が毎年かかります。このため、市側は本庁舎を既存の施設に分散させることで新しい本庁舎を建てず、管理費も抑える提案をしましたが、公園交換案と同じように否決されています。

人口が減っていく中、各自治体では子育て世代の呼び込みに工夫をこらす時代になっています。持続可能な自治体とするためにどれだけ将来に向けた投資ができるかが問われています。