2021年6月議会

2021年6月9日
厚生常任委員会・文教常任委員会の連合審査会

 2つの委員会にまたがる案件を議論するために、両委員会をくっつけて議論しました。

橿原市まちなみ交流センター条例の一部改正について

 「今井まちなみ交流センター」(花甍)、「今井まちなみ広場」(駐車場)という2施設の運営を、指定管理者に委託できるようにする条例の改正について議論しました。現在この2施設の管理は、観光政策課が市観光協会に委託しています。条例の改正によって、指定管理者は駐車場の料金収入を手にすることになります。駐車場の利用が増えれば指定管理者の収入も増えるので、指定管理者が来客数を増やそうと頑張るだろう、と市は見込んでいます。今後、指定管理者を選ぶ方法などを、市側が検討することになります。

矢追もと
 指定管理のメリット、デメリットはなんでしょうか。

観光政策課長
 メリットは、指定管理者の自主事業が可能となること。行政の発想とは違う観点から、新たな事業展開が期待できる。指定管理を導入することで、今井町や周辺の活性化を図り、さらなる観光振興に寄与する。
 デメリットは、観光の誘客が過ぎること。今井町は観光拠点の1つと観光政策課では位置づけているが、今井町の住民がいる中で、観光一辺倒にならないよう注意していかなければならない。 

矢追もと
 まちなみ交流センターの3年間の入場者数と、駐車場の利用料金はいくらですか。 

観光政策課長
 駐車場料金は令和2年度で658万2870円、令和元年度で733万6940円、平成30年度で651万6100円。 今井まちなみ交流センター「華甍」の来館数は、令和2年度で合計1万1807、令和元年度で2万9371。平成30年度は2万8648。 

矢追もと
 コロナで昨年度の来館者数は減っていますが、駐車場利用はさほど減っていません。来館者数の減り方とイコールになっていないと思います。 私も今井町に住んでいますが、町内はとても道が狭く、町内の飲食店を利用する人が駐車場を使う場合もあります。令和元年度に駐車場使用料が上がっていますが、ちょうど人気のあるカフェがある。そうした店が町内に1つ増えただけでも、駐車場の利用者は増えます。
 指定管理者の頑張りで駐車場利用料が増減する一般的な観光施設と、この施設は毛色が違います。例えば、指定管理者ではなく、地元の取り組み(店など)がうまくいって「華甍」の駐車場の利用が上がることもありえます。

観光政策課長
 確かに駐車場は現状、コロナ禍においても一定の収入がある。委員がおっしゃる通り、今井町内に新たなお店ができたりして人気店になれば駐車場料金も増えることもあるだろう。逆に、人気店が1つなくなれば駐車場の料金も減る。 確かに、今井町内の事情で増減する、指定管理に因らない部分がある。 

矢追もと
 今井町全体が1つの観光施設みたいに受け取れる部分もあるかもしれませんが、必ずしも住民一人一人はどんどん来客してほしいと思っているわけではありません。デメリットを答えてくださったと思いますが、お客さんをどんどん呼ぶことを喜ぶ人ばかりじゃありません。それでも指定管理者が収益を上げたい、どんどん観光客を呼びたいと、市民と歩調が合わない形でたくさん人に来てほしいという「数の観光」を続けるか、それとも、地元住民の意見を聞きながら、歩調を合わせながら取り組むというのでは全然違います。
  私自身も今井町に住んでいて、いろんな観光客の方に会ったり、道を聞かれる機会もあります。間違って細道に入り込んだ車を駐車場まで案内するとか、そういう機会もたくさんあります。町内の住民一人一人が少なからず観光を担っている部分が多いと思うのです。なので、今井町の観光を指定管理者だけに任せるのではなく、やはり担っている一人一人の声をしっかり聞いてくれる指定管理者にしてほしいんです。指定管理者を選定するにあたって、例えば地元自治会、保存会、住人、店をしている人から定期的に声を聞ける仕組みを取り入れる方に指定管理を受けてほしい。選定にあたり、そういったことを明記した上で実施できますか。 

観光政策課長
 委員お述べのとおり、今井町は重要伝統的建造物群保存地区で、大切に守り続けてきた市の歴史的遺産。市内の観光振興を行う上でも極めて重要な地域。 指定管理者には、住民生活の場であることも認識して最大限配慮を行い、観光地一辺倒とならないように進めていただく必要がある。地元の関係団体、地域の住民と連携を取って進めていけるように考えたい。

2021年6月9日
厚生常任委員会

橿原市介護保険条例の一部改正について

 収入が一定減った人を対象として、介護保険料の減免をするための条例改正です。昨年度、減免対象となったのは20件だったという説明がありました。

矢追もと
 減免措置について、昨年度から対象になる人にどのような形で周知されていますか。減免対象であることを知らなかった人はいますか。

介護保険課長
 賦課通知というのを毎年7月10日前後に、1年度分の介護保険の決定通知を送り、その中で減免を説明している。7月の市広報「かしはら」に掲載し、ホームページでも周知を図る。 

矢追もと
 窓口で他の手続のとき、対象であれば声掛けしていますか

介護保険課長
 納付相談などで窓口に来たら世帯の状況等を聞き取るので、該当する方は案内している

矢追もと
 昨年度の20件というのは多いのか少ないのか判断できませんが、せっかく延長された減免措置が必要な方に適用されるよう、周知や案内に努めてください。

橿原市新沢千塚公園拠点施設条例の一部改正について

 現在市が直営している「シルクの杜」の運営を、指定管理者に任せることができるようにするための条例改正です。並行して、建設常任委員会では「新沢千塚公園」全体の運営をPark-PFI(パークPFI)という方式で民間事業者に運営を任せられるようにする条例改正が議論されていました。簡単に言えば、新沢千塚公園を長期に貸して利用料を市に払ってもらうかわりに、公園内に商業施設を設けるなど、民間事業者が収益事業を行えるようにする形式です。値上げなどで市民が使いづらくなったりしないよう、質疑しました。

矢追もと
 指定管理のメリットを市民に分かりやすく説明してください

スポーツ推進課長
 現在、シルクの杜は直営で運営している。これを指定管理することで自主事業が可能になる。今回、Park-PFI(パークPFI)との兼ね合いもあるが、指定管理だけのことで話すと、自主事業の部分とコスト圧縮がメリットとして考えられる。 逆にデメリットは、自主事業などで利用者が増えた場合、その利用料は業者の利益になるが、指定管理料はある程度決定しているので、それを踏まえて人件費などを削減されるとサービス低下につながる可能性がある。事業報告などで毎年確認し、サービス低下しないよう進めたい。

矢追もと
 私も昨日、建設常任委員会でパークPFIの説明を聞いた。パークPFIと今回のシルクの杜の指定管理を一体として考えると、スケジュールも同じですか。すると、いつから指定管理が始まり、業者が全部同じになるのかも教えてください。 

スポーツ推進課長
 指定管理の開始はパークPFIと同じく来年4月を予定している。 業者選定は、パークPFI事業に伴い、シルクの杜だけでなく、公園管理もしてもらう。企業の集合体のような形を公募で募集させていただきたい。

矢追もと
 指定管理の期間が15年でイメージとして長い。普通なら数年ごとに1回見直しがあって、市民の要望に応えているかチェックが入ると思いますが、途中そういったチェックは入りますか?
 
まちづくり部副部長
 指定管理だけだと、委員おっしゃるように3年あるいは5年程度の期間になる。パークPFI事業と指定管理事業については、毎年委員会を設けて、施設利用者や周辺の集客施設、「ふれあいの里」の運営事業体の農事組合法人、そういう方々を含めた協議会で内容を確認しながら、適切に運営していきたい

矢追もと
 パークPFIになったとしても、指定管理者として市が定めた料金の下で運営してもらうのでしょうか。利用料金や駐車場料金などが今よりも高くなったり、市の設定より高く民間が設定できる仕組みではないということを確認させてください

スポーツ推進課長
 利用料金は、今現在設定している価格を基に指定管理者が定めることができるが、双方の協議の下で決めることになる。

矢追もと委員
 1年ごとに協議会でチェックするという説明もありましたが、地元や使用者の理解があった上での使用料金の設定だと思います。市民が今より使いにくくなったということがないようにしてほしいのです。市民のための施設ということをベースにしてください。

スポーツ推進課長
 もちろんその部分については重々、頭に入れながら検討していきたい。

2021年6月14日
スポーツ施設の活用及び整備等に関する特別委員会

橿原市スポーツ施設計画策定業務等の進捗状況について

 3月議会でも議論された、市のスポーツ施設に関する議論の続きです。奈良県は、県所有の橿原公苑と市所有の橿原運動公園を交換して、橿原運動公園を中心に令和13年に国体を開催する方針を示しています。一方、橿原市としては市スポーツ施設の活用や老朽化した施設をどうしていくか検討しています。この日は、市が考えるスポーツ施設のあり方について、中間報告がありましたので、内容を報告します。

(報告内容をまとめる、資料の写真などを貼る)

スポーツ推進課長

 橿原市スポーツ施設計画策定業務【中間報告】。橿原運動公園を先行調査した中間報告です。1段目が公園施設の長寿命化計画で策定した今後10年間の修繕費用、2段目が施設の使用見込み期間を60年間に設定し2022年以降に要する今後の修繕費用、3段目が使用見込み期間を迎えた際の解体撤去費用、4段目が現施設と同程度のものを建替えした場合の費用等を積み上げている。 

 個別施設計画の適用手法は、総合プールは「廃止」が妥当とされ、屋根付運動場、硬式野球場、多目的グラウンド、テニスコートは「長寿命化」が妥当とされている。軟式野球場は「機能改修」が妥当で、ソフトボール場は「集約化」が妥当と評価されている。今後、市民や利用者アンケートの結果なども交えて最終的な方向性を定めたい。

 

まちづくりのコンセプトは、スポーツからはじまり、子どもたちをはじめ市民の誰もが明るく健康的な未来につなげていける新たなまちづくり。取組として「つながる」をキーワードに、橿原運動公園と橿原公苑とで共通の4項目を設定する。畝傍山を中心としたスポーツ拠点施設の整備を起点に、日本国はじまり地である本市の魅力を一層高め、スポーツを核として、あらゆる主体がつながり合い、歴史的な背景を守りながら、地域の発展につながることを目指す。一体的整備で防災機能の充実を図り、安全・安心なまちづくりにつなげたい。

橿原運動公園のコンセプトは、多くの人が集い、憩い、楽しめるスポーツ・レクリエーション活動の拠点。かつ、防災拠点としてさらに発展させ、他県に比べスポーツ施設が十分にない奈良県で、一体的整備によって、スポーツという新たな魅力や価値を創出し、育んでいくという未来志向の公園を目指す。スポーツを「する」「観る」「支える」といった市民スポーツの高揚を引き続き確保し、さらなる発展につなげたい。共生社会の実現を目指し、新たにインクルーシブパークをコンセプトとする。

橿原公苑のコンセプトは、体育施設と文化施設を合わせた総合的な心身の修練道場として設置された「橿原道場」の歴史や、昭和21年の第1回国体開催地という由緒ある経緯、さらには、荘厳とした神苑の立地特性や緑豊かな環境なども踏まえ、歴史と文化を継承する公園を目指す。現在の文化・スポーツの総合拠点としての位置づけを継承し、奈良県の考え方と同様に、武道の聖地づくりもコンセプトに含めている。

令和元年はテニスコートで2万6,806人、軟式野球場で1万5,514人、ソフトボール場で1万944人、硬式野球場で2万3,235人、多目的グラウンドで2万882人、屋根付運動場で1万6,331人、合計で11万3,712人。

奈良県が橿原運動公園で考えている拠点施設は、県の候補地等調査検討業務の報告書で、第1種の陸上競技場は約100億円、サブトラックは20億円、投てき練習場は2億4000万円、アリーナが102億円、硬式野球場の高規格化が16億円となっている。 

県の考え方で土地・施設の全部交換とは、事業方法の1つである、有効的な1つとは捉えているものの、奈良県が確認事項の回答をもってしても、先ほども申し上げたとおり不明瞭な部分が多々ある。資産評価や附帯条件の整理もまだ整っていない。現時点で全部交換が最適・最良とはまだ判断ができない状況である。

2021年6月10日
県立医科大学・附属病院を核とした
まちづくり事業等に関する特別委員会

医大附属病院の外来患者アンケート調査等について

 橿原市は県とともに県立医大・付属病院周辺のまちづくりを検討しています。その中で、医大のそばに近鉄の新駅を設けることが検討されています。今回は、医大病院において新駅などについて聞いたアンケート調査の結果について報告がありました。私はこのエリアに最近できた道路の交差点が危険なので、対策を求めて質問しました。

 市の説明

 「新駅整備に伴うまちづくり効果検討業務」。4月21日に実施した医大附属病院来院者を対象としたアンケート調査結果について。費用対効果について、整備費用、施設の維持管理更新費用の合計に対して、新たな人の流れがどの程度生まれるか、市民生活がどの程度便利になったかをできるだけ数値に置き換える。新駅利用者の想定として、医大附属病院に通院目的で来院、医大及び医大附属病院の学生、教職員、医療従事者、新たなまちづくりエリアに来る方、大和八木駅、八木西口駅、畝傍御陵前駅を利用する人のうち、利用駅を新駅に変更する人、これは医大来院者以外となり、例えば自宅が新駅の近くにある人などが対象になると考えている。そして最後に万葉ホール利用者などが対象となる。

 新駅整備に伴うまちづくり効果検討業務では、昨年度からこれらの検討を行った。将来新駅ができた場合に通院目的で医大附属病院に来る人のどれぐらいが駅を利用するか想定するために実施した。最終的には奈良県、近鉄、橿原市の3者の適切な役割分担や新駅の方向性を判断するための1つの判断材料として使用したい。この結果だけで結論が出るわけではないが、来院者の交通手段に関する意向がある程度把握できた。 

 医大附属病院の玄関2か所で調査票を配布し、病院内5か所の回収ボックスに投函してもらった。1006枚調査票を配布し、有効回答数は748件。

 年齢は70歳代が最多、50歳代以上が全体の77%。橿原市民23%、市民以外の県民69%、県外8%。来院目的は748人のうち589人、79%が通院目的。交通手段は運転や送迎含めて78%が車で来院。鉄道では14%。以下、自転車、タクシーと続く。新たに整備されれば利用したい施設・機能は、駐車場整備を望む人が56%、鉄道駅は26%、路線バスは9%、新たな整備不要は6%、その他3%。その他は病院直通のシャトルバスや送迎バスといった意見が複数、バイク置場という意見もあった。 

 通院と回答した589人は医大附属病院の外来患者で、現在の交通手段について、橿原市民の結果は、自動車61%。自転車12%、鉄道11%、以下、徒歩、タクシー、バイク、バスなど。次に、市民以外の奈良県民は、車が83%、鉄道15%、以下バス、タクシーなど。

 新たに整備してほしい施設は、市民は駐車場が47%、鉄道駅29%、バス路線14%など。市民以外の県民は、駐車場60%、鉄道駅27%、路線バス7%など。合計では駐車場整備56%、鉄道駅27%、路線バス9%、新たな整備は必要なし5%、その他3%。

 鉄道以外の来院者が新たに整備してほしい施設は、通院者数589人から鉄道利用87人を引いた502人が対象。ここでは502人中114人、23%が、現在鉄道は利用していないが新駅ができれば鉄道を利用して来院したいと回答している。この人々が純粋に増える鉄道利用者の一部として数えられると捉えている。内訳は橿原市民32%、市民以外の県民65%。

 新駅整備の3者の役割分担や新駅整備の方向性は、来院者の想定だけで判断できず、医大及び附属病院の学生、教職員、医療従事者、あるいはまちづくりエリアに来られる人などを含め、どの程度の人が新駅を利用するのか、さらには整備や維持管理に要する費用に対してどれだけの効果が見込めるのか、また八木西口駅が移設されるとどのような影響があるのかなど、様々な観点から判断をする必要がある。新駅整備等に伴うまちづくり効果検討業務は、現在、各種検討結果の整理、取りまとめをしている。

市街地整備課長 アンケート調査では必要な機能として「新駅」と回答した市民の回答が多いというのが率直な印象だ。現状15%程度が鉄道を利用しているのは想定範囲内だったが、新駅整備を望む人が10%近く増加し、20%台になっているのは率直な印象として多いと感じた。
矢追もと
 市民から、新キャンパスの予定地から慈明寺町・四条町線が新しく延び、参道側の道路と丁字で交差するようになった。参道側の歩道が2車線分にわたって途切れる形になり、車と歩行者や自転車が当たりやすくなるのではという心配の声があった。特に夜は歩道がとても暗く歩行者や自転車が見えにくい。危険箇所として安全確保をする予定はあるか

市街地整備課長
 令和3年3月に橿原神宮との交差点改良工事が完了し、供用を開始している。この交差点改良工事に伴い、歩道の分離距離が広がっていること、また参道への合流を待っている車両が歩行者の通行を阻害するような形で停止をするケースがあることから、非常に危険な状況と認識している。車道に交差点注意の路面標示と、歩行者横断注意の看板を設置した。

矢追もと
 参道の暗さに不安もあります。 

道路河川課長
 参道側が暗いということで、現在、県に整備を要望しており、照明が整備される予定。

プロジェクト推進局副局長
 奈良県中和土木事務所と協議しており、あそこは木が茂り暗く、夜歩きにくいので、県が主体となって参道の道路照明を詳細設計している状況。 

市街地整備課長 医大周辺地区のまちづくりは100億円程度の費用は必要と想定。新駅整備は駅舎も含めて50億円程度、残り半分がまちづくり部分に必要。新駅は奈良県、近鉄、橿原市で費用負担をどうするか議論していく。国から新駅整備に最大3分の1程度の補助が出るスキームもある。まちづくりの部分は補助事業のスキームに乗る部分は国からの補助が充当され、それ以外は奈良県と費用負担割合を相談するか、県とのまちづくり包括協定の事業として県の金銭的な支援があるのか今後、県と調整していく。

2021年6月11日
市庁舎建設事業等に関する特別委員会

 橿原市では、耐震性能の低い本庁舎をどうするかという検討をかなり前から進めています。本庁舎の建て替え計画(9500平方㍍、57億円を想定)が12億円上振れしたとして、亀田忠彦市長は3月議会で計画を見直す方針を示されていました。しかし、亀田市長はこの日、計画の白紙撤回と、既存施設への移転を表明されました。市の幹部職員は市や議会、市民が求めた当初の機能を削れば12億円の上振れをなくせると説明し、亀田市長と建設を望む議員との間で議論は紛糾しました。新人ではありますが、みなさんの意見を議会に反映すべく、質問をしてきました。

亀田忠彦市長の説明

  • 本庁舎の現地建て替えは断念し、既存施設に移転させる
  • 断念の理由は3つ。
    • 設計会社との契約が9500平米、57億円だったのに約12億円増えること。
    • コロナ禍で財政が悪くなっていること。ミグランスや万葉ホールなど使える施設があるので新たな庁舎を建てるべきではない。
    • 現庁舎は立地がよく、民間に貸すことができれば収入となる。また、金を払って借りている北館や駐車場などを全て解消できれば歳出削減もできる。
  • 本庁舎に耐震性能がなく、職員や市民の命を守るため、本庁舎を解体撤去すべき。既存施設に移ってから、本庁舎の位置も含めて橿原市が発展するまちづくりを議論したい。
  • 庁舎建て替えを断念したり、既存施設を使ってコストダウンした事例は全国にある。小中学校の統廃合による空き学校や体育館、撤退したショッピングセンターを庁舎にした事例もある。
  • (計画策定に使った)2億数千万が取り返せない金と指摘を受けたが、だから60億円を支出していいのか。国からの交付金を使わないと損するというが、7~8億円返ってくるから60億円を支出するというのはちょっと違う。
  • 分庁舎(ミグランス)を造ってしまった今、本庁舎を建て替えたら向こう100年間は集約化できなくなる。

市の幹部職員が議会で説明した建て替え案と、既存施設を利用する案

  • 建て替え案
    • 市や議会がリクエストした機能や設備を削減して事業費を下げた。
    • さらに免震構造だったものを耐震構造に変更し、事業費を57億5000万円まで下げた。
    • 国からの交付金が期待でき、市の実質負担額は約45億5000万円と想定。
  • 既存施設を利用する案
    • かしはら万葉ホール、中央公民館分館、分庁舎(ミグランス)を利用する。
    • 3月議会では26億6100万円かかると説明したが、約14億6000万円になった。
矢追もと
 どちらの案が費用が少なくて済むか、正確な比較ができていない。建て替え案は57億円まで圧縮されたが、本当にそれで済むのか分かりません。既存施設を利用すれば、この土地を活用して収入も得られるかもしれません。そういった要素を比較することが、最少の費用で最大のパフォーマンスにつながると思う。
 既存施設を利用する場合、これだけの費用が浮いて活用できる、市民のためになるというイメージがないと、財政危機で建て替えを断念するという市長の意図が伝わりにくいと思います。市民にちゃんと説明するにはメッセージが必要です。

市長
 確かにおっしゃるとおり。しっかり示さないと説得力がないのは当然だ。ただ、現時点では、この3か月でいろんな議論をしてきたのが精いっぱいだった。努力してできるだけ早い機会に示すことが必要と、今、再認識した。費用的なことを精査して、きちっと報告できるよう努力したい。

矢追もと
 議員になる前に、本庁舎の建て替えに関する市民ワークショップに参加しましたが、「既存建物を活用してほしい」といった意見が一定程度ありました。また、市有の公共施設を数十%削減しなければならないため、その案を考える市民ワークショップにも参加し、机上ではありますが、みんな泣く泣く施設の削減案を作りました。先日、昔の水道局を改装し、新しい中央公民館ができました。昔のものを活用しながら使い勝手よく、きれいに改装され、いいものができました。ですので、今後の公共施設全体を考えたとき、本庁舎に既存建物を活用する案も一度は検討しなければいけないと感じています。今、公共施設は何%削減する目標で、本庁舎は全体の何%にあたりますか。

西田喜一郎・政策統括監
 公共施設整備計画では20%削減となっていた。確かに、今、矢追委員がおっしゃったように、ワークショップでは使えるものは使ってほしいという意見もあった。我々は、大きな小中学校を統廃合し、公営住宅を減らして有効利用していきたいと説明した。確かに資料不足かもしれないが、私たちとしては相当議論をしてきたつもりだ。それらを踏まえても、方向性を早く決める必要がある。時間を費やせば費やすほど、いろんな思いが出てくる。私は市長にも説明した。市長や皆さんにもいろいろ思いがあると思うが、我々としては前の代の議員、今の議員を踏まえて議論し、防災拠点、市民の命を守る観点から、現在地での建て替えがベターという意見になったと思っている。職員も市長も一丸となって決まった方向へ向かって進めるためにお願いしたい。 

矢追もと
 経緯をずっと見てきた経験の長い議員と、今年3月から議会に参加し、初めてこういった場で意見を言えるようになった私のような者とは、気持ちも全然違うでしょう。私はもう少し資料を比べた上で、本当に安い方法が他にあるならそれも検討したい、トータルコストを安くして市民のためになる方法をとりたい、と思っています。
 本庁舎の建て替えワークショップのときにも、年配の参加者が「これからは教育に力を入れてほしい」とおっしゃっていました。子育て世代の1人として、ご年配の方がそうおっしゃっていただけるのが本当にうれしいと思いました。財政が厳しい中、何にどう使うかをすごく考えなければならない。建て替えにかかる予算を別のところで有効活用できれば、と私は思っています。もう少し情報を出していただいた上で、市民に分かるように検討し、結論を出したいと思います。

 質疑の後、市長の「既存施設を利用する案」に対する現時点での賛否を調べました。賛成する議員は、私を含めて9人いました。賛成しなかった議員は10人おられました。本庁舎を移転する場合は過半数ではなく、特別に3分の2以上の賛成が必要となります。このため、現時点では移転するのに賛成数が足りないことになります。

2021年6月17日
一般質問

 3月に次いで、2回目の一般質問です。大きく次の3項目について質問しました。

  1. 子育て支援への新型コロナウイルス感染症の影響について
    • 3月議会で聞いたホームページや相談体制について
    • 新型コロナの出産への影響
    • 緊急対処措置の期間における保育園一時預かりの「利用控え」について
    • 教育分野における新型コロナの影響
    • 保育・教育現場で働く人への優先的なワクチン接種について
  1. 橿原市の今後の子育て支援政策について
    • 橿原市の子育て世帯が流出していることについて
    • 子育て世帯の流出を止め、子育て世帯の移住を促すことについて
    • 橿原市の移住促進パンフレットやホームページについて
    • 子育て・教育政策への投資について
  1. 新しくつくられたハザードマップについて
    • 大雨災害が起こったときの車を使った避難について
    • 水害時に車ごと避難する場所について
    • 地震後における車中泊での避難について

1.子育て支援への新型コロナウイルス感染症の影響について

矢追もと
 昨年から続くコロナ禍の影響を受けて、規模を縮小あるいは停止した子育て支援がありますか。休園・休校などは耳に入りますが、出産前後の支援や子育て施設などでの状況について教えてください。
 
藤井綾子・健康部長 
 令和2年度の全国的な緊急事態宣言を受けまして、地域の子育て支援拠点である、こども広場、子育て支援センターでは、令和2年3月2日~5月31日を休館にした。以降、感染予防を徹底し、運営形態の人数制限、事前予約、時間制限の上、再開している。令和3年4~5月の県内自粛要請中も、感染対策を徹底した上で、子育ての一助となるよう継続的に実施した。
 また、保健事業としましては、個別相談事業以外は中止しておりましたが、母子を取り巻く現状は非常に厳しいため、解除後は感染予防対策などの措置を講じながら順次再開した。集団で行っていた両親学級や離乳食教室、歯の健康教室などは時間帯ごとに少人数の定員を設けて予約制とし、集団の講話の中止、離乳食教室においては試食を中止した。
 母子健康手帳を発行する時の対面相談は、アクリル板の設置、事業全般としては換気、消毒液による消毒作業を行って実施している。3か月児や10か月児などの健診は、受診期間を延長し、対象月齢を過ぎても受診できるようにした。妊産婦や新生児、乳幼児等の訪問事業は、母子の不安解消の場として、感染症対策をして実施している。母親の要望で訪問を見合わせた場合は、保健センターでの面談や電話相談をしている。電話相談の場合は、予防接種や乳児健診の履歴を確認している。 
 母子の妊娠、出産、子育てという時期はすぐに過ぎ、待ったなしだ。適切な時期に必要な支援を滞りなくやっていく必要があるので、今後もコロナ対策を講じながら工夫して行っていきたい。

○3月議会で聞いたホームページや相談体制について

矢追もと
 警察庁の統計によると、令和2年に児童虐待で通告された児童数が統計を始めてから初めて10万人を超えました。コロナ禍での外出自粛の影響が懸念されています。虐待は家庭内で起こるものですが、お困りの家庭が見えにくくなっているのではないかと心配しています。例えば、離れている実家からの支援を受けられないとか、友達のお宅に行き来して子どもを遊ばせたり、親がおしゃべりする場が減ったりすることで、行動が各家庭単位になって大変孤立しやすい状況です。お困りの方を早く支援につなげるために、3月定例会の一般質問では、より市民が相談しやすい窓口になるよう、電話対応の工夫やホームページの子育て窓口の情報の分かりやすい表示をお願いしました。今の進捗状況を教えてください。また、LINEでの相談についても前回の質問で提案しましたが、導入についての考えを教えてください。 

藤井綾子・健康部長
 ホームページの変更については、健康部内での子育てプロジェクト会議で協議している。「妊娠・出産」及び「子育て」のカテゴリー内の情報整理と、トップページから子育てに関する情報を検索できるように工夫している。内容的には、妊産婦から乳幼児、子育ての相談窓口のページ等において、母親目線に立ったページづくりを心がけていきたい。 
 子育て相談窓口は、子育て世代包括支援センターで妊娠期から子育て期にわたる総合的な相談が実施されております。特に虐待の疑いのあるものについては関係機関と連携を図り、相談件数は、令和元年度365件、令和2年度258件となっております。そのうち電話での相談が231件となっており、約9割が電話による相談となっております。LINEやメールを利用した相談は物理的には可能でございますが、虐待の案件等の場合、相談の特性やネットワークの安全性、早急な対応が必要な場合もあり、その利用については今後十分に研究していきたい。

矢追もと
 前回の一般質問の中で、「財政状況が厳しい中ですが、予算をかけずにできることは積極的にやってほしい」と要望しました。ホームページの改善は多くの方が要望しています。技術的な部分については広報広聴課やデジタル戦略課などとの連携を強化し、1日も早い変更をお願いします。 
 また、橿原市の公式LINEアカウントを使っての子育て情報の配信など、検討できることはたくさんあると思いますので、ぜひ検討してください。

○新型コロナの出産への影響

矢追もと
 コロナ禍で妊娠を控える方が増えているのではないかといろいろな報道などでも言われています。過去5年間の橿原市の妊娠届の数を教えてください。 

藤井綾子・健康部長
 この5年間の妊娠届の件数ですが、平成28年度961件、平成29年度979件、平成30年度が931件、令和元年度854件、令和2年度が874件となっている。 
 妊娠届出数はコロナ禍前から全国と同様、年々、減少傾向だ。緊急事態宣言が出た令和2年4月の届出数は少し落ち込んでいるが、年間では令和元年度より多く、橿原市ではコロナの影響で妊娠を控えているとは現時点では考えにくい。

矢追もと
 今のところ妊娠届には新型コロナの影響は見られないが、全体としては妊娠数自体が減っているとのことです。平成28年は961人、そこから令和2年度では874人で、87人減少しています。これはまた別の問題として注目すべき点です。

○緊急対処措置の期間における保育園一時預かりの「利用控え」について

矢追もと
 5月には奈良県の緊急対処措置に合わせ、橿原市でも保育園での一時預かりは利用を控えてもらうことになりましたが、利用を控えるという基準が分かりにくいと感じた方がいました。中には、ご自身の通院を諦めた方や、家族が療養中で子育てに大変困難を感じている方もいました。実家に頼れない、近所のお友達の協力も得にくい状況で、一時預かりが最後の砦という方が多くいる中、苦しい選択を迫られる形になりました。再び緊急対処措置となっても、支援が必要な方が孤立しないよう、丁寧なご対応をお願いします。

○教育分野での新型コロナの影響

矢追もと
 新型コロナ感染で休校措置が取られた学校がありました。また、感染した家族の濃厚接触者となった子どもは、陰性でも2週間ほど外出できないと聞いています。そうした長期欠席の学習支援はどうしていますか。子どもには1人1台タブレットPCが配付されています。コロナに限らず長期欠席する子どもへのリモート学習に活用できると思うのですが、いかがでしょうか。

𠮷田雄一・教育総務部長
 濃厚接触者となった場合、10日から2週間程度の長期欠席になる。今年度に入り、数校が休校した。子どもは1人1台、タブレット端末のクロムブックを持ち帰り、ビデオ通話アプリを使ったり、「ロイロノート」という授業支援アプリを使ったリモート学習、「ミライシード」というアプリを使ったドリル学習が可能になっている。
 ただし家庭によってはインターネットの接続環境がない場合もある。その場合はプリントやドリル教材で学力を保障する。クロムブックを使う場合も、プリントやドリルなどを併用して家庭学習を進めていきたい。コロナ禍で長期欠席を余儀なくされた児童・生徒には今後も様々な支援を検討したい。 

矢追もと
 タブレットPCによる学習は、先進自治体の例も参考にしてぜひ取り組んでください。また、差別や偏見が起こらないよう、感染者した子ども、その周囲の子どもへの精神的なケアについてもよろしくお願いいたします。

○保育・教育現場で働く人への優先的なワクチン接種について

矢追もと
 全国的に、学校や保育の現場でクラスターが発生しています。保育所や幼稚園、学校現場での感染は、子育て世帯への影響がとても大きいです。保育士や教員の方々は大変な緊張感と責任感を持って働いてくださっていますが、大きな負担になっていると思います。介護施設の従事者への優先的なワクチン接種と同じように、保育園、幼稚園、学校といった教育現場などで働いている方々へのワクチン接種を、公・私立を問わず早めていただけませんか。 

小路一樹・福祉部副部長兼ワクチン接種対策室
 現在、65歳以上の高齢者の方のワクチン接種を実施しており、7月末に終える予定。その後、既往症のある方、高齢者施設の従事者などに接種することになっている。 このうち、高齢者施設の従事者という枠をエッセンシャルワーカーへの拡大適用を検討している。「生活維持に欠かせない職業に就いている方々」「人々が日常生活を送るために欠かせない仕事を担っている方」と定義されており、教職員、保育士などを含んでいる。 一定の期間、これらの方々に優先予約期間を設定するという考え方もある。また、エッセンシャルワーカーの職種、業種は現在検討している。

矢追もと
 訪問介護を担っている方や、学童保育の指導員さんなどから、ワクチン接種を望む声があります。保育・教育現場では、夏休み明けにはワクチン接種が済んでいるのを目安として進めていただけてもいいのではないでしょうか。様々な現場の声を聞いて、検討してください。

2.橿原市の今後の子育て支援政策について

矢追もと
 現在、橿原市は人口が減少しています。ピークだった平成22年の12万5605人から、令和元年は3774人減って12万1831人です。少子高齢化は橿原市も全国と同じ傾向。妊娠届は5年前と比べて90人弱減っていて、学校の35人学級なら3クラスくらい減っているわけです。生まれた人の数から亡くなった人の数を引いた数値を自然増減といいますが、平成27年は153人の自然減、令和2年には298人減と、差が拡大しています。橿原市人口ビジョンでは、未婚率の上昇や男女ともに晩婚化が進んでいるデータなども一緒に挙げられています。

○橿原市の子育て世帯が流出していることについて

矢追もと
 今回はそれ以外の、社会増減の部分について質問します。 社会増減とは、市への転入から市外への転出を差し引いたものです。橿原市の社会増減の状況、特に移動が多い40代まで、5歳ごとの社会増減の過去5年間の合計値とその分析を教えてください。 

福西克行・企画部長
 平成9年度以降、平成22~25年を除き、おおむね転出超過が続いている。特に平成26~30年は300人以上が転出超過している。(以下、説明をまとめる)

平成30年における転入・転出

橿原市への転入
県内から…1965人、県外から…1760人

橿原市からの転出
県内へ…1939人、県外へ…2227人

全体的に転出超過。
県内…奈良市、香芝市、大和高田市、田原本町への転出が多い
県外…近畿(約6割が大阪府)とそれ以外(約半数が東京都)への転出がおよそ半々

平成27年から令和元年までの5年間の社会増減

0~4歳5~9歳10~16歳15~19歳20~24歳25~29歳30~34歳35~39歳40~44歳45~49歳合計
320人減75人減16人増68人減471人減297人減238人減236人減93人減64人減8846人減
 福西克行・企画部長 
 転出が転入を上回る転出超過が続いている。特に男女とも20~30代の若年層が「仕事」や「結婚」を理由に、近隣市町村や大阪府、関東圏に転出するのが橿原市の人口減少に影響を与えているのではないかと分析している。

矢追もと
 20~24歳が一番減っているのは、進学や就職での転出が多いと思います。一方で、0~4歳、20代後半~30代の転出が多いのは、子育て世帯ごと転出しているのではないでしょうか。私はこれに注目したいのです。 社会を支える若くて元気のある世代と、未来を担う子どもたちが、この転出数の中でかなり大きな部分を占めているのは間違いない事実だと思います。 
 国の統計局のデータによると、橿原市は平成22年~令和元年の10年間で計約2800人の転出超過となっています。0~14歳は600人ほどで約21%を占めます。親世代も一緒に転出していると考えると、2800人のうち半数程度が子育て世帯と見ることもできると思います。

○子育て世帯の流出を止め、子育て世帯の移住を促すことについて

矢追もと
 平成28年度3月発行の橿原市人口ビジョンでは、2020年の人口を約12万4000人と推計していましたが、令和2年3月1日現在の人口は12万1534人。推測よりかなり速いペースで人口が減少しています。そして、今年4月1日は12万1151人です。人口減少の多くが転出超過によるもので、自然増減の割合は大きくないというデータがここから見えてきます。 
 若い夫婦世帯は子どもの出産などをきっかけにして、広い家に住みたいとか、子育て環境の整ったまちに暮らすために引っ越しすることが多いと言われています。しかし、橿原市からの転出が圧倒的に多い状況が続いているのはなぜでしょうか。私はこの問題を、市長や理事者、議員、そして市民と共有したいのです。「人口が減っているのは日本全国どこも同じだから」とか「少子高齢化だから子どもが減るのは当然」ではなく、子育て世帯の流出は橿原独自の問題として考えなければならないからです。 
 持続可能な人口規模の維持が必要です。今現在住んでいる方には、橿原市にずっと住んでいたい、ここで子育てしたいと感じていただき、移住を検討している方にはぜひ橿原市で子育てしたいと思ってもらえるような土地にしなくてはなりません。 
 そこで、お聞きします。今後、橿原市で打ち出していく予定の子育て政策を教えてください。 

藤井綾子・健康部長
 まずは待機児童解消の取組を市として引き続き取り組みたい。財政難で歳出を伴う政策はかなり厳しいものもあるが、全ての児童が愛され、保護されること、心身の健やかな成長・発達・自立が図られるように取り組みたい。
 子育て支援として、市内の自主サークルや地域子育て拠点の啓発、交流支援も進めたい。また、平成29年度に、妊娠期から子育て期にわたり切れ目なく、妊産婦・乳幼児を包括的に支援する母子保健活動の拠点として「子育て世代包括支援センター」を設置した。さらに令和4年度には、子育て家庭と妊産婦等を支援するため、児童相談所や子育て世代包括支援センター等関係機関と情報共有し、実態把握や相談対応等のソーシャルワークを行う「子ども家庭総合支援拠点」を設置する予定だ。関係機関同士の綿密な連携の下で、児童虐待の未然防止や虐待発生後の支援に適切に対応でき、専門職を複数配置することで専門的知見に基づくチーム支援の対応ができるようになる。 
 今後は、市町村だけでなく、地域の多様な主体が日常的に子育て家庭を支えるまちづくりを目指していきたい。
 
矢追もと
 今やっている事業が間違っているわけではないと思っています。ただ、子育て世代包括支援センターや子ども家庭総合支援拠点は、国が設置を進めるもので他の自治体も取り組んでおり、橿原市の独自政策ではありません。 
 一般的に目立つ「子育て支援」というと、医療費や給食費の無償化などがありますが、橿原市にはそういったインパクトのある子育て支援が乏しいという印象があります。無償化すべきと言いたいわけではなく、他の自治体と比べたときにアピールできるものや、橿原市の子育て支援はここがすばらしいんだというメッセージ性が弱いと感じています。 
 また、子育てにおいては教育分野が欠かせません。小・中学校などの教育も、保護者にはかなり興味のある部分です。教育について、橿原市としてアピールしたい部分を聞かせてください。

𠮷田雄一・教育総務部長
 本市では、児童・生徒にきめ細やかな対応をするため、市の単独経費で、いじめ・不登校対策指導員や特別支援対応非常勤講師、中学校の教科対応非常勤講師を配置している。今年度5月1日現在では、小学校に43名、中学校には49名、小・中学校合わせて92名を配置している。特に、いじめ・不登校対策や特別支援への対応に積極的に取り組んでいる。 また、心理相談員を全中学校に3~4名、全小学校に1名を配置している。 
 また、不登校児童・生徒が通う適応指導教室「虹の広場」で、ひきこもりを防ぐだけでなく、児童・生徒の思いや心理状態を酌み取り、保護者や家庭と連携して支援している。 
 学校への支援は、スクールライフサポーターを4名配置し、定期的に学校を巡回し、気になる児童・生徒に相談を行っている。 
 また、いじめ対策巡回指導相談員1名を配置し、保護者からのいじめ・不登校の相談対応だけでなく、「虹の広場」やスクールライフサポーターとも連携し、学校現場との情報の共有を図っている。 
 今後も、子どもの自尊感情を高め、命を大切にする豊かな心を育てる教育を行う。様々な課題を抱える子どもは非常に多い。困っている子どもに寄り添いながら、成長へつなげるため、子どもの状態を適切に把握・分析し、個々の状況に応じた支援を行う。 

矢追もと
 市独自の経費でたくさんの職員を配置することで、子どもが学校の中で過ごしやすくなったり、他の職員の手助けになるなら、大変いい取組ではないかと思います。 他の自治体に比べて力を入れている部分、誇れるものを、目に見える形で発信してほしいんです。市民もそれを誇れるように共有していく必要があると思っています。さらにより良いものにし、橿原市がアピールできるものとして高めていけるのではないでしょうか。 
 例えば、橿原市の「子ども総合支援センター」は発達支援に特化した施設ですが、他の自治体からの視察も多いと聞いています。しかし、そこにある児童発達支援事業所「かしの木園」は、希望者が多く予約を取りづらいとも聞いています。それだけニーズが多いということでしょう。他の自治体より一歩先を行く取り組みを大事にし、さらに強化できないでしょうか。橿原市の強みを生かした発達支援の取組を1つのアピールポイントにできるのではないでしょうか。

○橿原市の移住促進パンフレットやホームページについて

矢追もと
 橿原市に住む人が誇れる子育て・教育環境を整えると同時に、移住を検討される方にとっても魅力的なまちであるとアピールする必要があります。ですが、橿原市の移住促進パンフレットやホームページは、子育てに特化した魅力を発信し切れていないと感じます。 
 現在移住を検討している子育て世代のニーズを把握し、分析しておられますか。

山﨑貴浩・魅力創造部長
 現在の移住パンフレットは、橿原市版CCRC構想、引退されてまだお元気な高齢者層を取り組んでいく構想の下、子育て世帯も含んだ幅広い層に向けて平成30年度に作成した。対象が全方位的で、作成から2年余り経過。移住促進の目標を子育て世代に絞るなら改訂、または新たにパンフレットを作成することも考えられる。 
 現在進めている「橿原市移住・定住サポートネットワーク戦略プラン策定業務」で、3月に橿原市や周辺市町村に移住した人を対象としたインターネット調査を実施した。本市に移住した子育て世帯を分析すると、移住先を選ぶ上で重視したポイントは、半数以上の方が「勤務先や通学先へのアクセス」と回答した。続いて「鉄道やバス、道路の利便性の高さ」、「ショッピング等の生活関連施設の充実」「医療、介護施設の充実」を重要視している。 また、7割以上が実家が橿原市内だったり、親戚、知り合いなどがいたため昔から知っていたという回答だった。こういった調査結果から、子育て世帯の移住促進には、関西圏からのU・Jターンや、買物や病院の受診などで橿原市に繰り返し訪問する人を移住促進のターゲットにすることが効果的と考えている。 
 移住促進を効果的に進める上で、子育て世代のニーズや動向を十分に把握し、分析することが必要と考えている。

矢追もと
 ネットアンケートでは、橿原市が選ばれた理由が、交通利便性の高さ、買い物できる店がたくさんある、医療機関が多いということでした。こうした魅力、メリットと感じられる部分がすでにあるにもかかわらず、ずっと子育て世帯が流出しているのはなぜかという分析が必要です。
 子育て人口を増やして、子育て満足度を上げるには、幅広い担当部局にまたがって多角的に取り組む必要があります。住まいのこと、公園などの自然や農業体験といった、子育て世帯が気にするポイントは多岐にわたります。まずは人口の流出を止め、橿原市を選んでいただける方が増えるように、部局を超えた専門チームを結成してください。そして、橿原市がアピールしたい子育て環境を分かりやすくパッケージし、住民や、移住検討者にも伝わる専用のホームページをつくっていただけませんか。

山﨑貴浩・魅力創造部長
 橿原市が将来にわたって健全な財政運営を続けるには、若い世代の移住促進、流出防止などに積極的に取り組む必要がある。議員お述べのとおり、市役所の全部局が多角的に、そして全職員が主体性を持って取り組まなければならない。
 橿原市のアピールポイント、橿原市の長所、子育て世代にとっての魅力を、分かりやすく効果的にアピールできるよう、全庁的な協力体制を整えて、移住促進施策やホームページの充実をはじめとする広報施策に取り組みたい。

○子育て・教育政策への投資について

矢追もと
 私は現在の状況を大変深刻に受け止めております。ぜひぜひ取り組んでいただきたいのでよろしくお願いいたします。 
 最後に市長にお聞きします。 亀田市長は、市長選挙の際、「緩やかな人口増加へ」と「子育てしやすい街へ」を公約に挙げておられました。子育て世帯の流出という状況を踏まえ、橿原市の人口減少問題と今後の子育て支援政策について、私の危機感を共有していただけないでしょうか。
 また、財政が逼迫する中で、一律22%の予算カットという指示も聞こえていますが、子育てと教育分野は未来への投資ではないでしょうか。人口が減少すれば、市の税収も減少します。今、必要なものをしっかり取捨選択した上で、メリハリのある財政見直しをしていただけないでしょうか。

亀田忠彦市長
 おっしゃったとおり、緩やかな人口増、子育て・教育充実ということを訴えて、市長に当選させていただいた。その思いは今でも変わっていない。今では県の内外問わず、いろんな自治体のトップが「人口増を目指す」と目標に掲げておられる。いい意味で、各市町村の競争だと思う。橿原市は特に利便性が高くて住みやすいまちなので、なおさらそういうことに取り組むメニューがたくさんあると思う。その1つが、議員がおっしゃった子育てや教育の充実による若い層の人口流出の阻止、そういった年代の移住者増だろう。 
 財政危機を宣言し、各部局一律に歳出の削減目標を掲げている。子育て・教育には当然力を入れていく、未来への投資なのは当然のことだが、その中でも取捨選択するべき項目はあるだろう。今まで目標が達成された事業だったり、民間に移管する事業だったり、費用対効果だったり、様々な観点から、どの部局でも一定の削減ができることを念頭に、一律の削減目標を立てたが、財政を健全化させれば、議員がおっしゃったような未来への投資、子育てや教育、企業誘致、雇用促進など、橿原市を長期に持続可能なまちにするための施策にしっかりと予算配分することを考える。そういった理解を共有しながら、人口増に向けて、あるいは魅力のあるまちづくりに向けて、議会の皆さんと頑張っていきたい。

矢追もと
 いろいろな部分で財政の見直しは必要だと思います。どこの部局でも同じだと思いますけども、少ない費用で効果を上げられるものがあるのであれば、いろいろ考えて検証してほしいし、もちろん子育て分野、教育分野も同じだと思います。
 新型コロナワクチンの接種事業で、職員の方々は大変忙しいと思います。そんな中、こういった人口減少に対する取組を同時並行で進めなければ、世の中が正常に戻ったときに遅れてしまいます。人口流出はすでにずっと続いているので、待ったなしの問題だと共通認識を持って取り組んでいただけるよう、どうぞよろしくお願いします。

3.新しくつくられたハザードマップについて

○大雨災害が起こったときの車を使った避難について

矢追もと
 6月に入り、各家庭に新しいハザードマップが配布されました。今回は、奈良県の新基準に基づいた浸水想定区域図を基に作られました。スマホの位置情報からその場で取るべき行動が分かる仕組みは全国初です。新しい取り組みを入れたハザードマップが配布されたのは大変喜ばしいことですし、ぜひその機能を市民も使ってみてほしいと思っています。
 ハザードマップは裏面にチャート式で、避難時に取るべき行動が選べるようになっています。避難先に、親戚・知人宅、旅館・ホテル、車中泊という選択肢があります。それぞれのメリット、デメリットも書かれていて具体的なイメージが湧きます。 
 もし大雨災害で指定避難所に行きたくなった場合、小さいお子さんや高齢者がいれば風雨に当たらない車での移動を選ぶ方もいると思いますが、車を使った指定避難所への避難は可能ですか。

立辻󠄀満浩・危機管理部長
 災害時には自動車を用いずに避難するというのが原則。しかし、高齢者、障がいをお持ちの方、小さい子どもなどを伴う場合、必要最低限の利用は可能。 ただし、車での避難時には浸水深の深いところで立ち往生することもあるので、アンダーパスなどを避けて避難所までのルートを日頃からイメージしてほしい。 安全に避難できるタイミングでの移動、早めの避難を心がけてほしい。 
 また、橿原市の約96%の建物では、2階以上に避難すれば安全を確保できる。 避難時の事故を避けるためにも、自宅における垂直避難など、それぞれに最も適した避難方法を個人個人が日頃から理解してほしい。

○水害時に車ごと避難する場所について

矢追もと
 ありがとうございます。アンダーパスなど、危険を避けて必要最小限で車の利用は可能ということでした。 
 コロナ禍で、避難所へ行くことを避けたり、家族だけでプライバシーを守れるように避難したい人もいると思います。また、水害時は車の水没を避けたいでしょう。車ごと家族で避難できる場所は確保していますか。

立辻󠄀満浩・危機管理部長
 イオンモール橿原と協定を結んでおり、駐車場を避難場所や食料・生活物資などを集約する場所として提供してもらえる。イオンモール橿原の立体駐車場が使える。具体的な運用方法は今後調整する。 また、市営の立体駐車場の活用も今後検討する。

矢追もと
 イオンモール橿原の立体駐車場という選択肢は有益な情報です。協定を結んでいるイオンモール橿原に感謝します。

○地震後における車中泊での避難について

矢追もと
 熊本地震の際には、余震の心配から車中泊で避難された方が多く、行く先が分散したことで避難者の実態把握が遅くなり、支援が行き届かない例がありました。それを教訓に、熊本県内の自治体を中心に、車中泊での避難場所の確保を進めたり、検討がなされています。新型コロナ対策またはプライバシー確保のため、車で過ごそうと考えられる可能性は十分あります。橿原市として、避難策の1つとして車中泊をどう位置づけ、避難場所は確保していますか。イオンモール橿原は車中泊の場所として利用できますか。

立辻󠄀満浩・危機管理部長
 地震直後の車での避難は、緊急車両の通行の妨げになり、被害拡大につながることも考えられる。また、長期間の車中泊はエコノミークラス症候群を発症する確率が高くなる。このため、本市では推奨していない。 しかし、コロナ対策やプライバシーなどを理由とした車中泊のニーズも理解でき、ワンボックスカーやキャンピングカーなど車の多様化を考慮すると、今後、車中泊への支援も検討する必要がある。 
 イオンモール橿原はあくまで車を利用した一時避難用。状況によって夜を越すこともありえるが、車中泊を前提とした場所ではない。

矢追もと
 橿原市には運動公園などに大きな駐車場があります。コロナ禍でプライバシーを確保したいとか、車がワンボックスであるとか、ペットがいて車中泊でしのぎたい、という人は一定数いるのではないかと予測しています。ペットを連れた避難所は「東竹田ドーム」が指定されていると聞きしました。ハザードマップへの反映は間に合わなかったようですが、ペット同伴の避難所は1か所しかないんです。ペットと一緒に避難したい時に、トイレもあるし、大きな公園に取りあえず逃げようと考える人がいてもおかしくないと思います。そういった人がいることを想定した上で対策を検討し、支援が行き届くようにお願いします。 
 こういったハザードマップに書いてある避難方法の選択肢が広がり、市民が実際にどうするかいろいろ考えるきっかけになるのは大変いいことだと思う。今後も避難所環境の改善や、市民への啓発に努めていただけますようにお願いします。